不妊原因〜
ほぼ5割の男性に原因
不妊の男性側の原因としては、特発性造精機能障害、精路通過障害(閉塞性無精子症)、性機能障害(ED)、加齢などがあります。特発性造精機能障害とは、精子の量の低下、質の低下のことです。
精液検査
- 禁欲期間
2日以上7日以内。また禁欲期間が長くなると精子濃度が高くなる現象が報告されています。 - 検査の回数
1カ月以内に少なくとも2回行う。2回の結果に大きな相違がある場合にはさらに検査を行います。2回の場合にはその平均値、3回以上の場合は中央値を採用します。
この検査で何がわかるのでしょうか?
- 精液量
- 精子濃度
- 精子運動率
- 正常形態率
WHOマニュアルによる正常下限値(2021年)
| 検査項目 | 正常下限値 |
| 精液量 | 1.4 ml |
|---|---|
| 総精子数 | 3,900万 |
| 精子濃度 | 1,600万/ml |
| 総運動率:前進+非前進 | 42% |
| 前進運動率 | 30% |
| 正常形態率 | 4% |
12カ月以内にパートナーが自然妊娠した集団の下限値(5パーセンタイルの値)
- 精液検査でWHOの正常下限値を満たすのは約8割と報告されています。下限値を満たさない約2割の男性は、自然妊娠の可能性がかなり低くなります。
- 下限値はあくまでも男性の妊孕力の指標のひとつにすぎず、35歳以上では下限値を満たしたとしても、精子の質が低下していると報告されています。精子の質が低下している場合、受精能力や胚を育てる力が低くなります。
- 35歳以下の男性では、精子濃度が上がると、4,000万/mL(下から25番目前後)までは妊娠率が上がったと報告されています。精子濃度が上がっても、他の「負の要因」で妊娠率は頭打ちとなりますので、「負の要因」を改善できるかどうかがポイントです。
精子の質とは何ですか?
- 受精能力
- DNA損傷率
【注目】精液検査では、精子の受精能力やDNA損傷率は分かりません。
精子の質が悪いと・・・
- 正常な受精卵ができない
卵子が活性化しない - 受精卵できても胚が育たない
発育途中で停止する - 胚が育っても妊娠に至らない
着床しない - 妊娠しても流産となってしまう
精子の質を下げる原因は何でしょうか?
- 不健康な生活習慣
- 加齢(35歳以上)
精子も老化する - 酸化ストレス
活性酸素の増加し、DNAが傷つく - 精索静脈瘤
手術で治るor改善の可能性
精子によくない生活習慣とは何でしょうか?
- 精巣への血流が悪くなる生活習慣
喫煙、高熱環境(サウナ、膝上のパソコン)、長時間の座位、ブリーフ、自転車競技など - 男性ホルモン不足となる生活習慣
睡眠不足、運動不足 - 生活習慣病
糖尿病、高血圧、肥満 - 長い禁欲期間
酸化ストレスとは
不健康な生活習慣+激しい運動 精子への酸化ストレスが増大
- 不健康な生活習慣(喫煙、飲酒、睡眠不足、栄養不足、疲労)に加え、激しい運動をしてしまうと体内の抗酸化システムでは対応不足となり、精子への酸化ストレスが増大してしまうようです。
- 酸化ストレスにさらされた精子は、運動率が低下したり、奇形精子が増えると報告されています。体力の消耗の激しい運動は、体内の活性酸素が著しく増え、精子に負の影響を及ぼす可能性があると言われています。
生活習慣を見直しましょう
不健康な生活習慣をあらためる
不健康な生活習慣(喫煙、飲酒、睡眠不足、栄養不足、疲労)をあらためましょう。
- 禁煙
- 食事
炭水化物の過剰摂取に気をつけて肥満予防。抗酸化作用のある食べ物の摂取。 - 生活
夜は早く寝て、疲労回復。適度な運動習慣。 - 高熱環境(発熱・サウナなど)を控える
- 長期間の禁欲をしない
毎月22日は「禁煙の日」
精子の老化をすこしでも遅らせるために、「禁煙」をおすすめします。
人工授精
- WHOの下限値から推定した、自然妊娠が可能な原精液の総運動精子数は900万〜1,500万個となります。人工授精が有効なのは、1,000万個以上とされています。1,000万個以下の場合は体外受精の適応と考えられて思います。
- 総運動精子数が500万個以上で、運動率が30%以上であれば人工授精が有効とする報告もあります。実際に人工授精当日の総運動精子数が500万台で妊娠した希少例を経験しております。
- 正常形態精子が少ない場合の人工授精の成績は不良とされています。
精液検査は必ずしも、
精子の受精能を反映しない
- 精液検査は必ずしも、精子の受精能を反映しておりません。WHOの正常下限値を下回る場合、精子の受精能が低下している可能性が高くなります。
- 体外受精を受けて判明する不妊原因が受精障害です。人工授精までの治療では、受精障害かどうかは分かりません。体外受精の受精率は一般に70%程度ですが、著しく受精率が低い症例は受精障害と診断されます。
精液検査は院内採精を
おすすめします
精液検査の結果には、禁欲期間、体調、検査環境(自宅 or 病院、出勤前 or 休日)、検査方法(器械 or 目視)、気温などが影響を及ぼします。精液検査は最初の精液をこぼしてしまと、結果が悪くなりがちです。最初に射精された精液の方に多くの精子が含まれるからです。再検査の際は、休日の午後などリラックスできる時間帯に変更したり、検査施設を専門クリニックに変えてみるのもよいと思います。
